世界貿易機関(WTO)

「2020年前半,貿易は急減」

令和2年6月26日

 6月23日,世界貿易機関(WTO)は,貿易統計・見通しに関するプレスリリースを発出したところ,その概要は以下のとおりです。なお,プレスリリース全文はWTOのホームページでご確認頂けます。

  1.  新型コロナウイルスの感染拡大により,2020年前半の世界貿易は急減した。しかし,各国政府の迅速な対応により,4月にWTO事務局が公表した最悪のシナリオには達さないと考えられる。
  2.  物品貿易量は,第1四半期に年率マイナス3%となり,第2四半期については,年率でマイナス18.5%となることを見込んでいる。歴史的に大きな下落幅ではあるが,もっと悪くなる可能性もあった。4月のWTO貿易統計・見通しでは,2020年の貿易量が,楽観シナリオでマイナス13%,悲観シナリオでマイナス32%の下落を見込んでいた。現在の数値であれば,今後,四半期あたり2.5%の成長を達成すれば,楽観シナリオに達することができる。しかし,今後,新型コロナウイルスの第二波が到来する場合や,経済成長が予想よりも弱まる場合には,このシナリオを達成できない可能性もある。
  3.  第2四半期に関する入手可能なデータによると,第1四半期及び第2四半期におけるより大きな落ち込みを想定していた悲観シナリオに陥りそうにない。国際商業航空便数,国際コンテナ取扱量,新規輸出発注等は大きな下落の後に反発しており,各種経済指標によれば,第2四半期に底を打った可能性もある。しかし,これらは歴史的に大きな下落からの反発であるため,経済回復の程度について確定的な結論を出すには慎重である必要がある。
  4.  今後2年間の世界経済の見通しは,世界銀行,OECD,IMF等による経済見通しの幅を見ても分かるとおり,非常に不確実である。世銀は,2020年に経済成長率がマイナス5.2%になると見込んでいるが,これはWTOの悲観シナリオと楽観シナリオの間になる。他の国際機関も同様に厳しい経済成長率を見込んでいる一方,貿易量については,WTOの楽観シナリオとほぼ同様であり,2008-2009年の世界金融危機の時に較べて,GDPの減少が貿易に与える負の影響が少ない可能性がある。
  5.  WTOは,貿易の所得弾力性を,世界金融危機と同様の5.3として見通しを立てたが,世銀の見通しにおける弾力性は2.6である。金融危機時と較べて弾力性が小さくなる理由としては,(1)金融危機時に較べ,各国の金融・財政政策が迅速かつ大規模に実施されたこと,(2)各国の所得支援等により,消費者が予想されていたよりも高い所得水準を維持していること,(3)今次危機においては,貿易の対象とならない接客,人的役務サービス,エンターテイメント等が大きく影響を受けたこと,などが考えられる。
  6.  今次危機においては,コンピューターなどの家電製品の販売は予想されていたよりも持ちこたえた。自動車の販売も大きな落ち込みを経験したが,5月には中国で年率5%増となるなど回復しつつある。耐久消費財の販売拡大は,新たな消費意欲を示唆している可能性があり,今後緊密にモニターしていく。
 
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